マダム野武士の南仏生活

南仏からつれづれなるままに。

誰とだって口論を厭わない人々 On voit les gens se disputer fréquemment partout.

2ヵ月以上、間のあいた更新となってしまいました。ご無沙汰しております。皆さまお変わりないでしょうか。

 

さて先日、フランスの方々はやっぱり口論を厭わないんだなと思った場面に遭遇したのでここに残しておきます。

それは平日の朝、トラムに乗っていた時のことでした。突然、大声で怒鳴り散らしながらトラムに乗ってきた一人の女性がいました。(この国では公共の場で大声で独り言を話す人は珍しくありません。)年齢は50~60代といったところでしょうか。始めのうちは独り言かなと思って、乗客全員が静かに聞いていたのですが、どうやら怒りが収まらない様子で、独り言がどんどんエスカレートしていき、暴走が止まりません。

怒りの矛先は若者全般だったようで、どこに行っても若者はスマートフォンをのぞき込んでいる、このような変わり果てた社会はもう終わりだというようなことをひたすらに大声で主張するので、居心地が悪く、私は思わず正面に立っていた学生さんの方を見ました。すると、向こうもアイコンタクトを返してくれて、少し安心感を覚えた瞬間、私の近くで黙って座っていた70~80代のご年配の女性がふいに腰を上げたのです。

そして、そのおばあさんは暴言を吐く女性に対して、「若者はあなたに害を加えていない。あなたの話に気分が悪くなった。」とスパっと言い放ってくださったのです。この勇気あるおばあさんに私は呆気にとられ、あまりのカッコよさに心の中で拍手を送りました。さすがフランス、相手が誰であっても、赤の他人であっても正論を突き付ける、黙って聞き過ごさない、この態度に本当に感動しました。

そんなおばあさんに対しても懲りずに反論する例の女性。「私が子供の時も、結婚した時も携帯なんて無かった。携帯電話にしがみついた若者しかいない、この社会は腐っている。お先真っ暗。」とおばあさんに言い返したのです。

呆れ返ったおばあさんは下車のタイミングが近づく中、「社会が変化するのは当たり前。私だってこの変化に適応してきた。適応しようとしないあなたに問題がある。」と言い放ち、最後にその場にいた他の乗客たちに「Bonne journée à tous!(みんな、良い一日をね。)」と言って杖をつきながらゆっくりと下車されました。

例の女性はその後もぶつぶつと独り言を言い続けていましたが、おばあさんが私たちの気持ちを代弁してくださったおかげで、その大声も気にならなくなりました。

日本ではあまり赤の他人同士が口論する現場に出くわしたことが無かったのですが、フランスに来て、このように公共の場で色々な人が色々な口論をしている場を目撃することが多くなり、やっぱりこの国では主張することが必要不可決なんだということを思い知らされます。