マダム野武士の南仏生活

南仏からつれづれなるままに。

お客様は神様か? Est-ce que le client est vraiment le roi?

フランスに来てから飲食店で働き始めて、1年が経ちました。日本でも学生時代に飲食店でアルバイトを経験し、社会人になってからも接客業に従事してきたのですが、二国間での「お客様」に対する考え方が全く異なり、このコペルニクス的転回が私の中でしばし混乱を生んでいます。

 

日本にいた時はクレーム対応が本当に億劫で、というのも基本的に社会の中で「お客様>従業員」という主従関係が容認されており、挙句の果てには「お客様=神様」とまで言わされる極めて異質な関係性が構築されていました。仮に本当に「神様」だったら、些細なことで怒鳴り散らさないだろうと、無理難題を言いつけてこないだろうと思いながら、菩薩の顔でクレームを右から左に聞き流す技術を体得しましたが、やはり、いくら聞き流すスキルが上達しようとも、精神的にすり減っていたことは否めません。

 

一方のフランスはというと、「お客様=王様」(真っ先にルイ14世を思い浮かべたのは私だけでしょうか。)と言われたりもしますが、肌感覚では「客=従業員」、場合によっては「客<従業員」という関係性のもとで社会が成り立っているように思います。(よく考えてみたら王様だって最終的には庶民の手によって裁きを受けていますしね…)お客さんを待たせることに罪悪感はゼロ、売り切れ・在庫切れは仕方ないこと、バカンス中だから対応不可などなど…お客さんも従業員に良いサービスをしてもらうために、自分の番が来るのを静かに待つ、求めている商品が無ければ出直す、バカンスを考慮して前もってお願いするなど、従業員に気を遣って、どうにかこうにか自分の必要とする(最低限の)サービスを享受しようとする、その健気な姿勢を街のあちこちで目にします。

 

このような違いがあるからこそ、外国で日本のサービスはずば抜けて素晴らしいとの評判があるのかもしれません。しかし、果たしてお客様は本当に神様なのでしょうか。逆説的に聞こえるかもしれませんが、日本社会は「言うことを聞いてくれない神様」を育て上げているように思えてなりません。フランス人のように従業員だって自分の権利をもう少し主張しても良いのかもしれません。いい塩梅でサービスの需要側と供給側の関係が均等になると良いなぁなんて思う今日この頃です。

 

 

自己紹介

はじめまして。南仏在住のマダム野武士と申します。特段、サムライが好きなわけではないのですが、どこにも属せず、のらりくらり生きていきたいとの思いから野武士と名乗ることにしました。特に深い意味はありません。戦いは好きではありません。

 

2021年5月に渡仏して早1年半が経ちました。渡仏したばかりの頃は右も左も分からず、フランス語も聞き取れず、そして話せず…スーパーで買い物をするのも、トラムに乗ってどこかに出かけるのも、日本にいた時のようなフットワークの軽さは見事に消え去り、とにもかくにも一人で外出するのが億劫でした。ありきたりの日々を過ごすことにこんなにもエネルギーを要するのかと自分の不甲斐なさに落ち込みながら、ただただ毎日をやり過ごすことに必死な私がいました。

 

そんな私も数々の失敗を繰り返し、たくさんの恥をかき、ちょっとばかり性格も変わり(笑)、ようやくこちらの生活に慣れてきた今日この頃。心に余裕が少しできたので、渡仏してから目にしたこと、聞いたこと、学んだこと、考えたことなどを忘れないうちに書き留めておこうと思い立ち、ブログを綴ることにしました。

 

フランスに来てから私の口癖になった「いろんな人がいるなぁ。」に要約されるように、日本での常識がものの見事に粉砕され、固定観念が瓦解され、価値観が根底から覆され、この1年半の間で出会った人々は私の人生に強烈なインパクトを与えてくれました。(通りすがりの人々も含みます。)世界は広かったです。地球は丸かったです。そんな目から鱗の日常でのできごとを、関西人の目線からパロディ調に書いていければと思っております。どうぞご笑覧ください。